2011年3月にシリア危機が始まってから15年。2024年11月、情勢は大きく変化し、シリアは平和と紛争、安定と無法、復興かさらなる破滅かの岐路に立たされています。しかし、人々の帰還は進みながらも、現在も多くの人々が人道支援を必要としており、情勢は安定することなく、今も世界最大の人道危機の1つとなっています。
政権移管、そしてシリアの今
2024年11月27日以降、シリア北西部等で開始された攻勢は、アレッポ等へ急速に拡大し、最終的には首都ダマスカスに到達、アサド大統領支配下のシリア政府崩壊につながりました。しかし、情勢は今も不安定で、2025年7月にはシリア南部スワイダ県にて大規模な武力衝突が発生。さらに2026年1月6日以降、シリア北部アレッポ県では、治安部隊とシリア民主軍(SDF)の戦闘が激化。多くの民間人が死傷し、広範囲にわたりインフラが損傷した他、19万人以上が避難を強いられました。加えて、レバノン等での空爆、中東情勢の急激な悪化により3月2~13日の間に約11万8590人がレバノンを離れシリアへ入国。国境でのモニタリング、救援活動の強化が急務です。
シリアが和平に向けて動き出し、2024年12月の政権移管以降、近隣諸国から152万4000人以上の難民が故郷を目指して帰還する動きもありますが、今も近隣諸国と北アフリカだけで370万人以上の難民が避難を強いられています。また、電気や水道が破壊され、病院や学校もなくなった故郷での再出発は極めて困難で、シリアに戻った帰還民の生活は非常に不安定です。
UNHCRはパートナー団体と協力し、人々の帰還を手助けすると共に、今も避難を強いられている人々、そして破壊された故郷で再出発を果たそうとする帰還民のため、シリア国内外で援助活動を続行しています。10年以上避難を強いられていた難民・国内避難民の多くは、長年の紛争で打ち砕かれたシリアには帰る家も仕事もない、厳しい状況です。
インフラへの被害も広範囲に及んでおり、主要都市では食料不足や物価の急騰が報告されている等、人々が必要とするサービスの多くが切迫しています。
今こそ、シリアの人々に支援が必要です
UNHCRはシリア危機が始まった当初より、周辺国のシリア難民および人々の受け入れコミュニティ、シリアの国内避難民や帰還民、そして2023年2月のトルコ・シリア大地震の被災者等への援助を実施しています。
「これは、世界で最も深刻な人道危機の1つを終わらせるために貢献できる、一世に一度の機会です。しかし、緊急の国際支援がなければ、この希望の窓は閉ざされます。シリアの人々は再建の準備ができているのです。問題は、世界が再建を手助けする準備ができているかどうかです」
フィリッポ・グランディ元国連難民高等弁務官
シリアの社会は急速に変化しており、今後の情勢を予測するのは大変難しい状況です。このような時こそ、UNHCRは保護の原則に立脚し、今も人道危機に瀕する人々のニーズに対応できるよう、シェルター支援や救援物資の配布、法的支援、避難を強いられる人々や帰還民を守り、支えるためのコミュニティセンターの再開といった援助活動を現地で続行しています。情勢不安、地震や山火事といった自然災害、社会経済の著しい悪化等の影響で人々の暮らしは困窮している中、UNHCRの役割はかつてなく重要なものになっており、現地での援助活動のさらなる拡大が急務です。
どうぞ、忘れないでください
今もシリアの人々は苦難と闘っていることを
家族を支えるために苦闘する帰還民のマフムードさん
マフムードさん(36歳)は、2013年に妻と共にシリアを逃れ、エジプトで5年間の避難生活を送りました。2025年、一家は再出発を決意してシリアのダラヤへ帰還しましたが、生活再建は容易ではありません。マフムードさんは小さな家を借り、地元の木工所で大工として働いています。一家を支え、安定した住まいを確保することが最優先ですが、経済的困難に日々苦闘しています。大工の腕は確かですが、家賃や2人の子どもを養うための生活費を賄うのがやっとの収入なのです。
UNHCRはパートナー団体と共に、約1500世帯が帰還民として登録されているダラヤにて、防寒支援を実施。マフムードさん一家にも、毛布、冬用ジャケット、ウール製の衣類や靴下の他、防水性のビニールシートといった援助物資を提供しています。
避難先で学びを得ようとするシリア難民の子どもたち
シリアへ帰還する人々は増加していますが、近隣のレバノンやヨルダン、トルコ等、今もシリア国内外で避難生活を強いられている人々は多くいます。
そんなシリア難民の受け入れ国の1つ、イラクのエルビルでは、UNHCRとクルディスタン地域政府が協力し、「難民教育統合政策」の一環として、シリア難民や他の地域からの難民、そして現地の子どもたちと共に、補習授業を実施。難民の子どもたちが現地の同年代の生徒たちと共に国内の教育制度に組み込まれることを目指し、困難な時期を過ごす生徒たちが教育を取り戻す助けをしています。
この援助活動により、難民の子どもたちが国内の教育課程に適応し、より明るい未来を築くことを支援しています。
シリアと周辺地域におけるUNHCRの援助活動例
シリア国内
避難先で、帰還した先で、受け入れコミュニティで、試練に立ち向かう人々を支える
シェルターサポートや保護サービス、生活に必要不可欠な物資の支給等を通して、長期にわたる避難生活を送る人々や身ひとつで逃れてきた人々を支える
故郷に戻り生活を立て直そうとする人々の帰還に際し、ニーズに沿った物資の支援をはじめ、さまざまなサポートを行う
アレッポにあるこの学校の修復後、数百人の生徒が学校に復帰。ルジャインさんの夢は、建築家になり紛争で壊れた街の建物を建て直すこと
UNHCRが修復したクリニックで診療を受ける子ども。住居や学校のほか、生活インフラも破壊され人々が生活を立て直す上での障壁になっている
紛争で夫を失ったアビールさん。センターに相談後、小規模事業の補助金を受けミニマートを開業。自身で生計を立て、子どもを育てている
コミュニティセンターで職業訓練を受講後、靴づくりの仕事に就いた女性たち。センターでは、生計サポートの一環として幅広い支援を提供
シリア周辺国
母国を離れ、困難に直面しながら生きる人々を支える
現金の給付支援に関連した家庭訪問で暮らしの窮状に耳を傾けるスタッフ。新型コロナの影響で苦境にある人々への緊急の給付も実施
学校が再開し、笑顔を見せる姉妹。コロナ禍で教育へのアクセスが危ぶまれるなか、ヨルダンではe-learningなどで学習の継続をサポート
アパレル関連会社で訓練を受けるマームードさんは、UNHCRの奨学金で大学に進学。高等教育や職業訓練の機会の拡大は重要な課題
難民登録のない人々や障がい者といった弱い立場に置かれた難民も含む、包括的な医療支援の展開。受け入れコミュニティを圧迫せずに難民の医療アクセスを向上させるようサポート
難民と地元の子どもたちを対象にアラビア語のクラスを開講。その他職業訓練など、コミュニティ全体が利する支援がより重要になっている
教師だったアリさんは、学校が爆撃され片足を失った。隣国に避難後、スウェーデンへ移住。第三国定住プログラムのニーズは依然として高い
シリアの人々が望んでいるのは、家族がいて住む場所があり、命の危険や飢えのない、ただ普通の、かけがえのない日常です。
UNHCRは、帰還民を含めたコミュニティの支援と共に、シリア国内で生活する他国からの難民の支援、不測の事態に備え緊急事態に即応する援助活動なども行っていますが、シリアの危機は世界から注目を集めることが少なくなり、現在も厳しい資金難により、援助活動縮小の危機にあります。2025年、シリアにおけるUNHCRの援助活動資金は、わずか29%しか充足されませんでした。
UNHCRは難民が自発的に安全かつ持続可能な帰還が実現できるよう、現地の情勢が前向きに進展するために尽力し、援助活動を続けていきます。シリアの人々に今必要な支援を届けるため、何卒ご協力をお願い申し上げます。
シリアの人々を支えるために - 皆様のご支援でできること
シリアで避難生活を送る人々のための就寝用マット 約40枚分
シリアの人々が避難中でも温かい食事を摂れる調理器具セット 約10家族分
レバノンに避難するシリア難民のための1か月分の現金給付支援 約10人分
※1年続けていただいた場合。1ドル=149円換算
- 当協会へのご寄付は、寄付金控除(税制上の優遇措置)になります。お送りする領収証は確定申告にご利用いただけます。
- ご支援者の皆様にはメールニュース、活動報告等を送らせていただき、難民支援の「今」、そしてUNHCRの活動を報告させていただきます。
- Webでご寄付いただく際の皆様の個人情報はSSL暗号化通信により守られております。
※皆様のご支援は、UNHCRが最も必要性が高いと判断する援助活動に充当させていただきます。
※支援を行う国・地域や情勢により物価は変動するため、上記の金額は目安です。